キスマーク



痛みの原因は勿論、ヒロ。何時ものマーキング。



ああ、今夜もまた……



「ヒロっ!」



と、怒鳴るも、



「今夜もつけておいたから」



そう言って、ヒロは悪戯な笑顔を見せる。



この笑顔は本当に厄介。




まるでこの先ずっと私だけに微笑みかけてくれるかのような、危険な錯覚を引き起こす。




そして、何時も残す“しるし”も、ずっとずっと“貴女だけだよ”と言っているみたいに思えて―…




戻らなきゃ、と思う。



もっと平坦で歩きやすい路に戻らなければ、と。



もう十分、ヒロには傷を舐めてもらったから。




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