キスマーク



『どうしても?』


「うん」


『そっか……』



残念そうな声を出すヒロに、



「今、タクシーの中だから切るね」



冷たく言って、通話を切る。そして、また、窓の外を見た。



ねぇ、詩織、


もし、二つ先の信号をまだ過ぎていなかったら―…?



そんな自問をしてしまう。




答えは―…もう、出したくなんてない。



出したくなんてないの。











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