キスマーク
『もしもし、シオリさん』
受話器越しに聞く、何時もの甘い声。
用件なんて聞かなくてもわかる。何時もの誘い。わかってるくせに、
「何?」
と、聞いてしまう私。そんな私の言葉に、
『今から会いたい』
と、予想通りの台詞を彼が言う。
時計を見れば、もう22時。
こんな時間に呼び出されれば、やることなんて一つしかない。
一つしかない、というか、私達にはそれしかない。
ヒロからの甘い誘いに、どうする……?と一瞬考えてしまう。窓の外を見ると、とっくに二つ先の信号は過ぎてた。
「今日はダメ。疲れてるの」
声を少し低めに出して、そうヒロに返事をする。