キスマーク
感じる周囲からの視線。
サイアクだ。つい、私までも大声を出してしまうなんて―…
社内で変な噂でも立ったら溜まったもんじゃない。ただでさえ、この手の噂って尾鰭や背鰭がついて勢い良く広まってしまうんだから。
それに、常務から知人の息子さんを紹介されて会食までした後だっていうのに、妙な噂が立つなんて勘弁してほしい。
そう思って、
「とりあえず、もうちょいトーンおとして」
と、小声で麻里に言うと、
「ごめん、ごめん」
と、苦笑い。それじゃなくても、私が勤める会社は秘書課ってだけで注目されているところがあるから社内での会話には気を遣う。
他の部署の人間がいる場所なんかは特に。