キスマーク



久しぶりに過ごすことになる久瀬さんとの時間。


遅れないように少し早めに家を出る。



マンションを出て、タクシーでも拾おうかな、と、キョロキョロと周りを見渡す。すると、一台のタクシーがマンションから少し離れた場所で停まったのが見えた。


空車になっていないけど、今乗っているお客さんがここで降りれば―…そう思ってタクシーに駆け寄ってみる。



後部座席のドアが空き、ああ、やっぱり誰か降りるんだ。運が良かった、とお客が降りてくるのを待つ。



降りてきたのは、スーツを着て眼鏡をかけた黒髪の男。



同じマンションの住人かな、なんて思って見る私。けど直ぐに、



「―…」



違う。そうじゃない―…と気付いてしまう。



うそ、でしょ……?と、心の中で呟いてしまう。



だって、タクシーから降りてきたのは先週このマンションに私に会いに来た人物。



< 182 / 207 >

この作品をシェア

pagetop