キスマーク
久しぶりに過ごすことになる久瀬さんとの時間。
遅れないように少し早めに家を出る。
マンションを出て、タクシーでも拾おうかな、と、キョロキョロと周りを見渡す。すると、一台のタクシーがマンションから少し離れた場所で停まったのが見えた。
空車になっていないけど、今乗っているお客さんがここで降りれば―…そう思ってタクシーに駆け寄ってみる。
後部座席のドアが空き、ああ、やっぱり誰か降りるんだ。運が良かった、とお客が降りてくるのを待つ。
降りてきたのは、スーツを着て眼鏡をかけた黒髪の男。
同じマンションの住人かな、なんて思って見る私。けど直ぐに、
「―…」
違う。そうじゃない―…と気付いてしまう。
うそ、でしょ……?と、心の中で呟いてしまう。
だって、タクシーから降りてきたのは先週このマンションに私に会いに来た人物。