キスマーク



そして、



「シオリさん、好き。俺と付き合って」



ヒロの言葉が私の心を覆う膜を破って、中心部にまで届いてくる。



ゆっくり瞳を閉じると、涙が頬を伝った。



ああ。


今、はっきりと気付いた。


ううん。気付いたんじゃない。もう偽れないのだと知ってしまった。



ヒロとの未来は見えなかったんじゃない。今までずっと私が見ていた、ヒロとの未来は“サヨナラ”のビジョン。



今は良くても、時が経てば私なんかよりも可愛くて素直なコに心変わりしてしまう。


たとえ今一番のお気に入りが私だったとしても、時の経過や新しい出会いの中でそれは簡単に入れ替わってしまうんじゃないかって―…



そんなことばかり考えてた。



ヒロを知ろうとしなかったのも、


逆に知られたくなかったのも、



好きになってしまうのが怖かったから。



年下の男相手に本気になって、惨めな結末を迎えるのが、


怖かった。


今さら年下であるヒロと恋愛をするのは大きな賭けのようで、


怖かった。




これから恋愛をするなら、楽で安定していて、ハードルの低い方が良い。




そう思っていたから―…






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