キスマーク



「誰が会うって言った……?」


「シオリさんが来るまでずっと待ってるよ。忠犬みたいに」


「やめてよ」


「じゃあ来てよ」



会話を続ければ続けるほど、ヒロのペースにひっぱらている気がする。外で食事だとか私は無駄だという考えなのだから、そんな一方的な約束は無視すればいいのに。


けど、無視なんて出来ない。



「約束だよ?シオリさん」


「……」



「ほら指きり」



背後から包み込むように腕を回され、その甘いマスクに微笑みが加えられると、



「わかったわよ……」



そう答えるしかない。



ホント、ヒロは思わずきゅんとせざるをえない言動が上手い。こんな二十代後半の女にさえ、胸に甘い痺れを走らせる術を知ってる。



ズルイ男。




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