キスマーク
「何よ……なに、してるのよ―…」
雨が濡らす夜の街に立ち、言葉を零す。
“約束だよ”“絶対だよ”と指切りをしたのはヒロ、あなたじゃない。
コーヒーショップの前を腕を組みながら歩いていた彼女と一緒に居るの?それならそうと連絡の一つくらい頂戴よ。
これだから“約束”“絶対”そんな言葉を簡単に吐く男は信じられない。
でも―…
“シオリさんが来るまでずっと待ってるよ。忠犬みたいに”
信じられない、という私の想いを掻き消すかのように浮かび上がってくるヒロの言葉。
甘い、甘ったるい彼の微笑み。
まさか、と思う。
まさか、この雨の中、私を待っているんじゃ―…と。