キスマーク



そうよ。


今、身体の関係を継続させているヒロとだって、一度目は弾みで寝て―…一度ヤッたのだから、二度も三度も同じ。


そんな気持ちで続けていたんじゃない。


それと同じことよ。大した問題じゃない。


問題じゃない、けど―…



なら、どうして私はあの部屋を出て雨の中に?



何十、何百回抱き合った一哉を突き飛ばして、私は誰を心に浮かべてしまった?



「ヒ、ロ」



彼の名前を呟き、バッグの中から携帯を取り出す。



「連絡―…きてない」



何度確認しても着信もメールもないまま。



「もぉっ……」



苛立ちを呟き、ヒロの携帯に連絡するけれども―…



『お客様のおかけになった電話番号は電波の届かない―…』



聞こえるのはさっきと同じ冷たいアナウンス。




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