キスマーク



この腕が誰のものなのか―…確認しなくても今夜は直ぐに分かる。



「良かった。会えて―…」



後ろから私を抱きしめたままヒロが言う。



「ごめん、シオリさん。携帯壊れてるの気付かなくて―…」


「壊れて……た?」


「うん。シオリさんからの連絡ずっと待ってたけど来なくて、俺から連絡しようと思ったら発信できないのに気付いて、確認したら圏外表示のままで―…」


「……」



風船が萎むみたいに力が抜けていく……



ゆっくりと周りを見れば、行き交う人が私達に注目してる。


そうよね……私だって、こんな公衆の面前でこんな風に抱き合っている男女がいたら思わず見ちゃうわよ。



普段の私なら、こんな場所で抱きつかれでもしたら、振り払って逃げてると思う。


場所を考えなさいよ、って、ヒールで足を踏んづけるくらいする筈。



けれども今日は出来ない。



大人しく黙ったまま、ヒロの腕の中に留まってる。




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