キスマーク
「シオリさん……?」
何時もとは違う私にヒロも不思議そうな声を出す。
「どうしたの?」
「別に……」
「もしかして、心配してくれた―…?」
そんなヒロの言葉に、
「自惚れないでよ……」
と、か細い声で言葉を返す。
「シオリさん、こっち向いて」
「―…嫌よ」
「もしかして泣いてるの?」
「泣いてなんかないわ―…雨に濡れただけよ」
すっぽりと私の身体を包む、この腕を今夜は振り払えないから―…せめて、言葉だけでも冷たくぶつけたい。
「ごめんね―…シオリさん」
「いくら謝られたって足りないわ……外で会いたいなんて言い出したのはあなたでしょ……?」
「そうだね。ごめん、シオリさん―…仕事はとっくに終わってたよね?」
「終わってたわよ……」
「本当にごめん―…お詫びに今夜はシオリさんの言うこと、何でも聞くから」