ダイス
「お、漸く来たか」
紗江子が自分のデスクに着くと、主任である澤村が軽く手を挙げた。
「遅くなりまして、申し訳ありません」
紗江子が丁寧に頭を下げると、澤村は声を出して笑った。
この人が刑事でいる限り、自分はこの人の下にいるだろう。
「いいって。年に一度くらいのこと、気にすんな」
澤村はそう言って紗江子の肩を軽く叩いた。
「ありがとうございます」
紗江子が顔を上げて言うと、澤村は笑顔を見せた。
五十を越えているというのに、精悍な顔立ちで体格も筋肉質でがっしりしている。
短く揃えられた髪は、薄くなったのを誤魔化しているのだろうがそれが逆に清潔さを感じさせる。
「それと、合同捜査本部が立つことになった」
澤村は一瞬にして凛々しい表情へと変わった。
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