ダイス
それもそのはず。
罪を感じていないのなら、それから逃げようと思う必要もないのだ。
深水と新井が立てた筋書きは、新井は勿論犯人のままで深水が取り逃がしたことにする。
それを警察官と紗江子に追ってもらい、雪音をその隙に逃がす、というもの。
自分が犯人を取り逃がしたくらいで、大したことにはならないはず。
この時の深水はそう考えていた。
そして、揉み合ったと思わせるように、深水の右腕に軽く包丁で切れ目を入れた。
痛くないと言ったら嘘になるが、上手くいくかどうかに緊張し、さした痛みは感じなかった。
痛みだけではない。
正常な思考を失っていたのだ。
その理由は今となって思えば、震え続ける雪音を助けてやりたいと思ったからだった。
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