ダイス



「おはようございます」


続いて紘奈が背筋を伸ばして入ってきた。


「おはよう」


紗江子が挨拶をすると、紘奈はにこりと笑ってみせた。


可愛い顔立ちをするわりに、少し変な笑い方をする。


だがそれを愛嬌と言ってしまえば可愛いものになる。


若さ、だろうか。


「あ、深水さん、何寝てるんですか?」


紘奈は寝ている深水を見るなり表情を変えて、大きな声を出した。


この子には上司を寝かせておいてやろうという考えはないようだ。


紘奈の声に深水はぱち、と目を開けた。


そして此処が何処か確認するように顔を上げ、左右を見た。


「早く起きて下さい」


紘奈が素早い動きでコーヒーを淹れ深水に渡すと、深水は朝から機嫌が悪いな、と言いながらそれを一口啜った。


それで初めて紘奈の機嫌が悪いことに気付いた。


紘奈が気付かないように振る舞っているのか、それとも深水だから気付いたのか。




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