ダイス




「……昨日」


なら何故昨夜言わなかったのか。


深水は雪音に見えない位置で溜め息を吐いた。


信用しているわけではない、か。


「新井は何て?」


深水は携帯電話を握り締める雪音に訊いた。


「今、何してるのって」


そんな理由で置いてきた恋人に電話を掛ける。


そんなことがあるのだろうか。


深水は眉間に皺を刻んだ。


「他には?」


わざわざ仕事中と分かっていてメールで呼び出すのだから、それなりの理由があるはずだ。


「……あの」


雪音は言いづらそうに口ごもり、視線を足元に落とした。



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