冷たいアナタの愛し方
ルーサーが手にしていたものは、何やら巨大な鉄の輪っかのように見えた。

だがよく見ると中心にはプレートが嵌められてあり、そこにはシルバーを模したような獣の姿と、ガレリアの国章であるウロボロスの紋章が刻まれている。


「ルーサー…これ…?」


「これが嵌められていれば、どこを歩いていてもある程度自由が利くよ。シルバーが魔物じゃないっていう証拠にもなるし、攻撃されることもないと思うから。さ、嵌めてみて」


ガレリアの国章が刻まれていること自体は少し不満だったが、ルーサーがシルバーと自分の身を案じて作ってくれた気持ちが嬉しかったオリビアは、シルバーの目の下にキスをして伏せを命じる。


「シルバー、伏せ。これを首にしていれば誰にも襲われたりしないんですって。いいわね?」


「うゎん」


首輪はずっしりと重たかったが、がちっと音を立てて首輪を装着すると、シルバーは重たさを感じることもなくすくっと立ち上がって首をぶるんぶるん振った。


「わん!」


「良かったわねシルバー。これをしていればどこでも歩いていいってこと?」


「その紋章は誰でも使っていいってわけじゃないんだ。一部の高官と僕たち王族しか使用を許されていないから、街に降りたとしても困った時は必ず誰かが助けてくれるし」


「街?街に降りてもいいの?」


はしゃぐオリビアに頬を緩めたルーサーが仏頂面のジェラールをちらりと盗み見ると、それに気付いたジェラールはどうだ似合うだろ、と目の前に座って見上げてくるシルバーの頭を撫でて肩で息をついた。


「行ってもいいが俺の許可を取れ」


「嬉しい!コロシアムとか見てみたいって思ってたの。地図とかあるの?明日行ってもいい?」


「…用意する」


オリビアに笑顔を向けられて耳が熱くなるのを感じたジェラールが部屋へと引き返す。


「全く…照れ屋だねえ」


「え?今なにか言った?」


「いや別に。コロシアムは危険だし、中へ入るにはある程度警備が厳しくて大変だから、僕かジェラールが一緒について行くよ」


シルバーのふかふかの尻尾に身体を包まれて、ぴょんぴょん跳ねているオリビアの反応に心を引き寄せられた自覚のあるルーサーは、ため息をつく。


「兄弟で、奪い合い、か……」


わかっていたことなのに。
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