冷たいアナタの愛し方
お化粧をするのもどの位ぶりだろうか。

晩餐会やお客様が王宮を訪れた時にはちゃんとドレスを着てお化粧を施してお嬢様を演じてきたが…


ふんわりな白いドレスを着てお化粧をしたオリビアは…完璧なお嬢様に戻っていた。


鏡の前で何度もくるくる回ってはどこかおかしいところはないか確認しているのは、ルーサーに誉められたいから。

傍ではシルバーがぴょんぴょん跳ねて、似合うよと言ってくれているみたいで白い手袋を嵌めたオリビアはようやく自身の姿に納得してシルバーを撫でまくっていると、ドアが開いた。


「リヴィ、もう用意はでき………」


「準備万端よ。このドレス本当に借りていいのかな…汚さないように気を付けるから」


振り返ったオリビアは、ルーサーとジェラールがドアのところで立ち止まっているのを見て首を傾げる。

ふたりとも凍り付いているように見えたので、やっぱり似合わないのでは…と思ってしまって再び鏡に映る自分自身を覗き込んだ。


「やっぱり似合ってないのかしら…。もっとおとなしめのドレスに着替えるからちょっと待…」


「いや、似合ってるよ。ちょっと驚いただけ。うん…すごく似合ってる」


ルーサーがオリビアに見られないように肘でジェラールを突くと、ジェラールははっとなって銀色の前髪をがしがしかき上げて舌打ちをした。

むっとなったオリビアはぷいっと顔を背けてドレッサーの前に座り、ずっと頭を下げているレティに声をかける。


「レティ、綺麗にしてくれてありがとう。後でまた会いに行くわ」


「ええ。じゃあね」


レティが部屋を出て行くと、オリビアはすっと立ち上がって赤いネクタイと白いシャツ、そして黒いジャケットを着て正装しているふたりに駆け寄った。


「ウェルシュに会いに行きましょ」


「そうだね。レディー、お手を」


本物の紳士に手を差し出されてぽっと頬が赤くなったオリビアにまた舌打ちをしたジェラールは、身を翻してさっさとコロシアムに向かった。
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