冷たいアナタの愛し方
「今の…見たか?」


「ん、オリビアが跡をつけられていたね。…オリビアが狙われているのか、それとも僕らか…」


一緒にランチを食べた後シルバーと追いかけっこをしているオリビアは全くといっていいほど気付いてはいなかったが、何者かに跡をつけられた後走り去っていた男に気づいていたジェラールとルーサーは、厳しい顔つきで状況を話し合った。


「あいつと知り合って4日経った。毎日こうして夕方になるまで俺たちと一緒にいるから家の者が心配したとか…」


「あるいは僕らが狙いでオリビアが目をつけられたとか…」


どちらにしろ状況は良くない。

危険を感じたルーサーはジェラールを守るべく辺りを警戒しながら立ち上がり、きょとんとしているオリビアに声をかける。


「ごめんね、今日はもう宿に戻るよ。今日も美味しいランチをありがとう」


「え…戻っちゃうの?さっき来たばっかりなのに…」


「うん、そうなんだけどちょっと用事があるのを思い出したんだ。ね、そうだよね」


本当はまだオリビアと居たかったのだがルーサーに肘を突かれて渋々頷いたジェラールは、悲しそうな表情でシルバーを抱き上げたオリビアに胸が痛み、背を向けながらぼそっと呟いた。


「…また明日な」


「!うん、また明日ね」


「…そんな口約束しない方がいい。オリビアが巻き込まれるのは君の本意でもないでしょ」


「あいつが巻き込まれる前に跡をつけてきた奴を俺が殺す。それで解決だろ」


本気でオリビアに心が傾きかけているジェラールの肩を抱いて街の中央へと向かったルーサーは、にやっと笑って囁いた。


「ガレリアに戻ったら父上…陛下にオリビアのことを話してみるよ。今すぐガレリアに連れていくのは難しいけど、いつかは君の妃になればいいね」


「!じょ、冗談言うな!がりがりで口も悪くて大口開けて笑う女なんか誰が妃なんかに…!」


「まあまあ。半分冗談だから」


「…半分本気なんだろうが」


――だが翌朝、オリビアはいつもの場所に現れなかった。

次の日も次の日も――


ジェラールとルーサーがローレンを後にするまで、会うことはできなかった。
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