冷たいアナタの愛し方
あまり一緒に居ることができずにとぼとぼ帰りついたオリビアは、ヘスターが厳しい顔つきで玉座に座っていたのでぴっと背筋を正した。


「お父様?」


「オリビア…今日からしばらくの間は外出を禁じる。お父様たちに内緒で知らない人たちと会っていたね?」


「え……な、内緒にしてたのはごめんなさい。でも悪い人たちじゃなくて…」


「お前にはまだその者たちが良い人たちなのか悪い人たちのか判断がつかないんだ。お父様は…悪い人たちだと思っている。だからもう会うのはやめなさい」


垂れ目と優しい人の2人の旅人にもう会えない――

呆然としたオリビアの表情を見ても厳しい顔つきを崩さないへスターは玉座から立ち上がるとオリビアを抱き上げて言い聞かせる。


「お前は養女だけれど王女なんだ。知らない人たちにお前が王女だと知られると危ないこともある。…話していないね?」


「…うん…話してないけど…あの人たちもうここを発つって言ってたの。だからそれまでは…」


「駄目だ。お父様の言うことを聞きなさい」


普段優しい父がこうも強く諭してくるのは珍しく、2人と会うのをとても楽しみにしていたオリビアは無言でへスターの腕から降りると、ひとつだけお願いをした。


「じゃあ…もう会わないから…森に居る狼の子供をお庭で飼ってもいい?」


「狼?いいとも、ここへ連れて来させよう。オリビア、つらいことを言っているのはわかっているんだ。だけどお前のことが心配なんだよ」


――恐らく捨て子だった自分を養女として迎え入れてくれた両親が心配している――

我が儘を言うことはできない、と自分自身に言い聞かせたオリビアは、なんとか笑顔を作って自室へと戻った。


「…垂れ目さん……優しい人さん…」


好きになりかけていたのに。

もう会えないとわかると余計に想いは募ったが、両親に迷惑をかけてはいけない。


「もうちょっと一緒に居たかったな…」


国に戻ると言っていたのでいつかは別れなければいけないとはわかっていたけれど…

互いに素性を隠しながらも様々なことを話して一緒に遊んでくれた2人を思うと悲しくなったオリビアは、ベッドにダイブして突っ伏した。


「いつかまた…会えるかな…」


もし再会できたならば、あの約束を優しい人は覚えてくれているだろうか。
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