冷たいアナタの愛し方
見上げてもてっぺんがないような大きな入り口は一般客用で、特別席を使う者たち用には別の入り口が用意されていた。


そこでも厳重なセキュリティチェックがあるらしく、武器など所持していないオリビアが緊張して身体を強張らせていると、入り口を警備しているガードマンたちがジェラールとルーサーの顔を見るなり敬礼して背筋を正した。


「これはジェラール様にルーサー様!どうぞお入りください!」


「ありがとう。ああこちらのレディーは僕たちの知人だから通してやってくれないかな。その大きな犬もね」


「はっ!畏まりました!」


シルバーの首にはウロボロスの紋章入りの首輪がついているし、オリビアはどう考えてもはたから見てお嬢様そのもの。

しかもジェラールたちの知人ともなればきっとどこかのお嬢様か姫なのだろうと勘違いしたガードマンたちは、オリビアのボディチェックをすることなく通してくれた。


「権力ってすごいわね…」


「時には役立つけどね。ああこの階段ちょっと急だから気を付けて」


ルーサーにリードされてドレスの裾をつまみながら階段を上がっている途中、後ろを歩いていたジェラールが鼻を鳴らした。

どうせドレスが似合わないとでも言いたいのだろうとすぐにわかったオリビアは、肩越しに振り返りながら舌を出す。


「汚したりしないから安心して。それに似合わないのもわかってるからそれは言わないで」


「…何も言ってないだろうが」


「今鼻で笑ったじゃない。そういうの女の子は敏感なんだから」


――だがここでよくよくオリビアもジェラールを観察してみる。


金色だった髪は今や銀色になってはいるが、それはそれで美しいし、ジェラールの怜悧な性格にはこっちの色の方が合っているかもしれない。

それにルーサーよりも垂れ目な瞳は真っ青で吸い込まれそうだし、鼻梁も整って…


つまり、突っ込み所のない美貌だ。


「じっくり見るんじゃなかったわ」


「?ああ歓声が聞こえたきたね。今日はどんなカードなのかな」


階段を見上げると、頂上が明るくなっていた。

出口に着いたのだと思った瞬間、爆発したような歓声にオリビアは首を竦ませた。
< 132 / 187 >

この作品をシェア

pagetop