冷たいアナタの愛し方
ガレリアの王都はそれ自体が円形のコロシアムのようになっている。

中心に城があり、周囲はもうもうと煙を立てている大きな煙突が何本もそびえ立っていて、せっかくきれいにお化粧をしてもらったのにすすで汚れては大変だと思ったオリビアはあまり顔を上げなかった。


「うちは軍事国家だから、もちろん独自で武器や鎧も沢山作ってるんだ。煙はあまり身体に良くなさそうだけど、一応風向きを考えて市民が住んでる方には煙がいかないようにしてるんだよ」


「へえ、ちゃんと考えてるのね。ねえルーサー、私顔が黒くなってない?大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。あとコロシアムで色々言われるかもしれないけど無視が基本だから。わかった?」


「?わかったわ。…え、馬車に乗るの?」


城の門を出た所に横付けされていた馬車を見たオリビアは、馬車自体に感激するのではなく、馬車を引いている白馬に駆け寄って腹を撫でてやる。

小さかった頃、小さかったシルバーを森で拾ったようにオリビアは動物好きで、ブリンカーをつけている馬は集中力がなく乱暴なものが多いというのに、オリビアに撫でられて上機嫌に尻尾をぴんと上げていた。


「いい子いい子。この馬車だとシルバーが乗れないわ、どうしよう…。シルバー、ちゃんとついて来れる?」


「わふっ、わんわん!」


「いいみたいだね、じゃあ行こうか」


まるでシルバーの言葉を理解しているかのようにそう言ってオリビアの手を引いて馬車に乗り込ませたルーサーは、むっつりして腕組みをしているジェラールの肩をぽんと叩いてひそりと囁いた。


「君がオリビアかリヴィかどちらかを選ぶまで僕は行動派起こさないから安心して」


「………」


さらにジェラールの顔がむっとなると、ルーサーは肩で笑いながら馬車に乗り込んで一路コロシアムに向かった。
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