冷たいアナタの愛し方
ガレリア王国に戻ったジェラールとルーサーは、早速王宮の最奥にある王の間へと脚を運んだ。

王宮内は最近静寂に満ちており、水面下で派閥争いが起きていることを知っているジェラールは、ルーサーの言葉以外誰の言うことも信じない。

政務官たちがすれ違う時に深々と頭を下げてくるが、ジェラールは目もくれずに父が座す玉座の前に立ち、胸に手をあてて頭を下げた。


「父上、ただいま戻りました」


「うむ、お前が居らぬ間馬鹿兄共が儂の気を引こうと躍起になっておって見苦しいことこの上なかった。その点ではお前は毅然としていてへりくだることもない。戦線に立たせればその歳で必ず功績を上げて来る。大したものだ。ローレンでは何か掴めたか?」


「…いえ、ただの片田舎でした。特に注意すべき点もなく、軍の駐屯地にも適しません。あそこはあのままでいいかと」


「小国はもうほとんど落としてきた。ただあの国が我が王国のやり方に最近異議を示しておる。一国が力を持ちすぎる、とな」


ジェラールは不満を口にする父王の話を聞いているようで実際聞いていない。

脇に控えていたルーサーはすぐそれに気付いて片膝を折り、忠誠を示した。


「陛下、ジェラール王子は少々疲れておりますので私でよければお聞きしましょう」


「ジェラールよ、儂はやはりお前を次期国王に推すことにしたぞ。お前もそのつもりで今後も邁進せよ。けして兄たちに隙を見せるな」


「……はい」


マントをはためかせて身を翻したジェラールは、忘れていた跡取り問題にまた悩まされることになり、深い息をつく。

正妃の母を心から愛している父王が、母そっくりの自分を可愛がり、愛してくれることは嬉しいが…兄たちからはすこぶる評判が悪い。


隙を見せてはいけないと再三言い聞かせられて育ったジェラールは、自室に着いても室内を歩き回って異常がないか調べた後、ベッドに寝転がった。


「……オリビア…」


どうして会えなかったのだろうか。

陽が暮れるまで待ったが現れなかった小さな女の子。


「…仕方ない、あんなじゃじゃ馬貰い手がないだろうから後継ぎ問題が収まれば迎えに行ってやってもいい」


あくまで偉そうな態度は崩さなかったが、それにも怯まないオリビアの憎まれ口は嫌いではなかった。


だがこの後血で血を争う骨肉の争いが起きる。

オリビアを迎えに行くどころではない状況に陥ることになる。
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