冷たいアナタの愛し方
なんとなく…

なんとなくだが、シルバーの様子がおかしい気がする。

何もないところをよく見つめているというか…ぼんやりしているというか。

もしかして病気になったのではと心配したオリビアは、ジェラールの離宮に着くとシルバーをベッドに横たえさせて、心臓の上に耳をあてて鼓動がおかしくないか聞いた。


「どこか悪いの?熱でもあるの?お医者様に診てもらった方がいいんじゃないかしら…。そうなると獣医さんなのかな」


「わん。わふわふ、わわん」


何か喋っているが、よくわからない。

むくりと起き上がってぺろぺろ顔を舐めてきたので元気はありそうだが…

オリビアが悩んでいると、ジェラールとルーサーが一緒に戻って来た。


だが2人共疲れ切った顔をしていたので、オリビアはキッチンに立ってお湯を沸かしながら2人を盗み見る。


「埋葬は極秘裏に行う。ウェルシュが死んだことは国民に漏らすな。即位式は数日内に行うから手配を整えろ」


「そこは僕に任せて。だけど…重要な客人が近日中にここにやって来ることになってるんだ。それはどうするの」


「…奴らが帰ってから即位式だ。参列は断れ。司祭を呼んで話を詰めてこい」


命令ばかりするジェラール。

本当はルーサーの方が年上だし、彼にも王となる権利があるはずなのに――ウェルシュが口走った件が原因で、王位に就けないのだろうか?

そんなことを聞けるはずもなく、2人分のコーヒーを淹れたオリビアはテーブルにそれを置いて正面のソファに座った。


「じゃあ私は即位式を見てからローレンに帰るわ。それでいい?」


「…それでいい」


そう言ったオリビアが数日間はここに居るとわかったジェラールは、少しだけ頬を緩めて背もたれに身体を預ける。

これからの数日間、とても忙しくなりそうな予感に少しでも身体の休息を行えるようにとそのままソファに寝転んで仮眠を取った。
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