冷たいアナタの愛し方
文字通り、数日間はジェラールとルーサーの両人はなかなか離宮に戻って来なかった。

ウェルシュ亡き今離宮の外の庭で見張られることもなくなったオリビアは、よく整備された芝生の上に座ってシルバーのお腹を撫でる。


「ローレンに帰ったらまず何をしたらいいと思う?お父様たちを見つけて…お墓を作ってあげればいいの?」


「…くぅん……」


「ジェラールが王になるのなら、ガレリアと国交を持つのもいいわね。でも今後も他国を攻めるのなら話は別だけど」


「ゎん」


鼻を鳴らしながら返事をしたシルバーはまだ若く、人間で例えると恐らく10代後半から20代前半というところか。

もし人間だったらどんな男なのだろうと様々な想像を巡らして楽しんでいると、疲れ切った表情のルーサーが城の方角から歩いてくるのが見えた。

慌てたオリビアは服についた草を払ったり髪を整えたりして身ぎれいにすると、笑顔でルーサーを出迎えた。


「お帰りなさい。今日も徹夜なの?」


「ただいま。うんまあね。うちは大きな国だから本来は即位式に他国の王たちも参列するんだけど、ジェラールがそんな仰々しいことはしなくていいって突っぱねるから準備は楽な方だよ」


頓着なく隣に腰かけてネクタイを緩めているルーサーの男らしい仕草にどきどきしながらも、盗み見る。

指は長いし細いし、軍人特有の手をしているが綺麗だと思える。

確かジェラールの手もこんな感じだったかとぼんやり考えていると、オリビアが違う男のことで頭をいっぱいにさせていることに嫉妬したシルバーはオリビアの膝にどすっと顎を乗せて上目遣いにルーサーを睨んだ。


「随分シルバーを心配しているみたいだけどどうしたの?」


「なんだか少し様子が違う気がするの。シルバーは魔物だから獣医さんに診せてもわからないだろうし…どうしたらいいのかしら」


「どこも悪いようには見えないけどなあ。強いて言えばずっと睨まれてるんですけど」


「わふっ」


譲らないから。


覇王剣に宿る者と話をして以来、シルバーは体内に漲る力を感じながら目下のライバルを睨み続けた。



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