冷たいアナタの愛し方
胸から生えてくる剣のことを知っているのは兄たちと両親だけ。

何故自分だけにこんなことができるのか…なぜ使ってはいけないのか――尋ねるといつも困った顔をされるので、深く追及したことはない。


風呂から上がってシルバーのご飯をあげようと思って庭に出たオリビアは、上空を飛び回っている飛竜を見上げた。

ローレンよりも少し南下した深い森の奥に住んでいる蛮族と呼ばれている者たちが飼っている飛竜たちで、彼らは人でありながら魔獣を手懐けている。

その魔獣を駆って傭兵として戦に参加することが多く、金を積めば敵であっても味方であってもお構いなしだ。

時折炎を吐きながら飛んでいる飛竜から視線を外したオリビアは、ぶんぶん尻尾を振ってお座りをしているシルバーに特大の肉の塊を与えた。


「シルバー…毎日退屈だね。私…養女だから大きくなったらもっと色々できるかと思ってたけど違ったよ」


「わふ?」


「胸から剣が生えるから?でも使っちゃいけないって言われてるから使ったことないよ?そういえばシルバーは見たことがないよね。見せてあげよっか」


一応辺りをきょろりと見回してから、指を鉤爪状にして胸に手をあてた。

すると――その手は吸い込まれるようにして胸に沈み込み、オリビアが手を引くと――まばゆい金色の光を放ちながら何かがゆっくりと姿を現す。

その時にはオリビアは金色の光に包まれ、驚いたシルバーは尻尾をブラシのようにしてオリビアの回りをぐるぐるしていた。


「これが私の剣。すごく軽くて扱いやすいんだけど…お父様やお兄様たちは重たくて持てないっていうの。変なの」


剣の刀身は縁が金色で、中央は触れれば切れてしまいそうなほどに冷たい光を放つ銀色。

柄には様々な色の宝石が埋め込まれてあり、この剣を見ていると何故か心が落ち着くので時々父たちに内緒で胸から剣を出しては眺めていた。


いつもはすぐ収まるのだが――何故か全身を取り巻く金色の光はなかなか消えず、金色に発光する剣はどこかオリビアを恍惚とさせていた。


「これを見られたら大変だから早くしまわなくちゃ。またね、リヴィ」


勝手に剣に名前をつけていたオリビアは、自身の胸を突き刺すようにしてリヴィを胸の中にしまうと興奮しているシルバーの頭を撫でて王宮の中へと戻って行く。


「お、おい…今の…見たか…!?」


「あれは…伝説の覇王剣じゃないか?!」


密偵が2人、木陰から驚きの声を上げる。

ガレリアからやって来た密偵は、すぐさま国に引き返して脅威を叫んだ。
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