冷たいアナタの愛し方
「なんだってこんな田舎で静養しなきゃいけないんだよ」


「お父様の言い付けなんだから堪えて。ここは永世中立国で力の持ち込みは厳禁なんだ。だからお前が危険な目に遭うこともない。それにいい所じゃないか」


「周りは森だし城は…城っていうか…この規模じゃちょっと大きい邸宅だろ。なんでこんなところに…」


さっきから何度も同じ文句を繰り返す弟をなんとか窘めながら歩いていたルーサーは、金の髪をがりがりかき上げているジェラールの頭をぽんぽんと優しく叩いた。

軍事国家ガレリア王国の数多く居る兄弟の中で最も才知に長けて剣の筋も良いジェラールを父王は気に入っており、現在は後継ぎの有力候補として頭ひとつ出ているジェラールは…まだ13歳だ。

その護衛兼話し相手として同行を許してもらった2歳年上のルーサーは、垂れ目の弟の目が吊り上っているのが気になって、人ごみを嫌うジェラールを森の奥の方に誘導した。


「何日間ここに居ればいいんだよ。俺早く戻りたい」


「今国に戻るのは得策じゃないんだ。お前は命を狙われるかもしれないんだよ。だから陛下が国から出したんだ」


「ふん、アホで馬鹿な兄弟が多いからな。俺はあんなばかでかい国を継ぐつもりなんかない。ルーサー、お前が国王になればいいじゃないか」


「僕が?いやいやそんな才はないよ。とにかく数日間はここでのんびりしよう。……ん、あっちに小川がある。何か軽食でも買って涼もう」


煉瓦の小道を歩いて森の奥の方へ行くと、前方から小さな生き物が駆けてきた。

少しでもジェラールに危険なことがあってはいけないのでルーサーが剣を手に立ちはだかろうとしたが――それよりも先にその小さな生き物はジェラールの足元にまとわりつき、尻尾を振りまくる。



「なんだ?犬…じゃないな。狼…?」


「シルバー!シルバー、どこに行ったの?戻っておいで!」



可愛らしい女の子の声。

これが3人の出会いとなる。
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