冷たいアナタの愛し方
涎をだらだら流しながらもちゃんとオリビアの“待て”を遂行しているシルバーは、バスケットの中のサンドウィッチから一瞬たりとも目を離さずに耐えていた。


「どっちの方から来たの?ここは南のオアシスって言われてるけど、近いところから?」


「うーん、そうだね、ちょっと北の方からかな。オリビアはいいとこのお嬢さんみたいだけど?」


何故か父たちからは王女であることを言ってはいけないと言われているオリビアは、曖昧にぼかしながら黙ったままのジェラールにバスケットを差し出した。


「私は貰われっ子だけど、お父様もお母様も私を愛してくれるから幸せ。勉強も剣のお稽古もちゃんとしてるし…」


「剣?ここは中立国だけど…」


「でも攻めてこられたら戦わなきゃいけないでしょ?軍は持ってないけど住んでる人たちは元軍人さんが多いからみんなで戦おうねって剣のおけいこだけはみんなでしてるの」


ジェラールとルーサーは目配せをしあい、バスケットからサンドウィッチを頂くと、何故かジェラールが見守る中ルーサーがぱくりと最初に口にした。

オリビアがきょとんとした顔で見ていたが嚥下した後ルーサーが小さく頷くと、今度はジェラールが口にする。


「ジェ…垂れ目君は後継ぎ候補だから僕が毒味をしてるんだよ」


「へえ…大変だね。でも北の方からっていったらガレリアの方だね。そこから来たの?」


「うるさいな、根掘り葉掘り聞くな。うるさい」


「垂れ目には聞いてないから黙ってていいよ」


…“怖い人”から“垂れ目”呼ばわりになってしまったジェラールはむっとしたが、無言でサンドウィッチにぱくついてルーサーを笑わせる。


「オリビアってお嬢様なのに意外と口が悪いんだね」


「だって畏まってるのは性に合わないんだもの。私、本当のお嬢様じゃないし」


――だが見た目はまさしくお嬢様そのもので可愛らしいし、将来は美人になるだろう。

それをジェラールの耳元で囁くと、ジェラールは鼻で笑って子供用のシャンパンを飲み干した。


「ふん、中身がこれじゃ嫁の貰い手もないだろうな」
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