冷たいアナタの愛し方
ジェラールの手術はなんとか成功した。

だが絶対安静で動かすことができず、医務室のベッドに寝かせて経過を見守っていると、ハルヴァニア軍が訪問してきたと報告が入った。


「私が行こう。アンナ、君はここで彼を診ていて」


「はい。あなた…オリビアのことは……」


「できれば協力を請うて捜してもらえないか頼んでみよう。行って来るよ」


1階へ降りて近衛兵と共に外へ出たへスターは、正門の前に立っていた男の姿に驚いた。

こちらを振り向いてにこっと笑った若い男は、現在ハルヴァニアの国王である男だったからだ。


「へスター陛下。急いで駆けてきましたが、あなたが御無事で良かった」


「レイド…駆け付けてくれてありがたい、おかげで命拾いをしたよ。さあ中へ」


「奥方や皆も御無事で?その…オリビアも…」


「…そのことで頼みたいことがあるんだ。とりあえず中へ」


「わかりました。ではお前たちは街の巡回を。困っている方々が居たら協力を惜しむな」


長い黒髪をひとつに括った聡明利発さが窺えるきびきびとした命令が頼もしく、へスターを見つめる黒瞳は同情の色が浮かび、そしてまた怪訝さも湛えていた。


「しかしなぜガレリアが永世中立国であるローレンを攻めてきたのですか?それも何の予兆もなく…」


「我が国が密かに力を蓄えていると妄想していたようだった。それも誤解だったのだが…民や兵を失って心が痛む」


「ご心中お察しいたします。陛下…先程オリビアのことで言いよどみましたが、オリビアはどこに?」


――レイドがオリビアを心配するのには理由がある。

へスターは玉座の間にレイドを導いて力なく腰かけると、片手で額を押さえて俯いた。


「オリビアが…行方不明になった」


「!?へ、陛下…何故オリビアだけが行方不明に?」


「わからない。一緒に居たオリビアの飼い犬も行方不明になった。レイド…ここはもう大丈夫だから君はハルヴァニアに戻ってオリビアを捜索してもらえないだろうか」


レイドはへスターを真っ直ぐ見据えて力強く頷いた。


「わかりました。オリビアは私の大切なフィアンセです。必ず見つけてローレンへとお連れしましょう」


「…頼んだよ。大切な娘なんだ。必ず見つけてほしい」


レイドは左胸を拳で軽く叩いてへスターに誓った。
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