冷たいアナタの愛し方
「この傷はひどい…。とりあえず止血をしよう。治療ができる者は?」


「私は少々医療をかじっております。薬と医療道具があればもしかすれば命は助かるかも…」


遠い所で声が聞こえた。

身体の感覚がなくなって、さっきまで痛かったはずなのに痛点もなくなって、死ぬ直前に差し掛かったのだと思った。

気力を振り絞って重たい瞼をなんとか開けると、心配そうにこちらを覗き込んでいる40代程の男と目が合ったような気がした。

その男の髪の色は――金と茶の入り混じった珍しい色。

モノクロだった世界が、突然カラーに変わった。


「…オ、リ……ビ、ア…」


「!君は……オリビアを知っているのか…?!」


振り絞るような声でそう言った後、若い男…ジェラールは気を失ってしまい、介抱したへスターは隠し扉を開けて中から出て来た妻のアンナと息子たちを厳しい眼差しで見つめた。


「この剣…ガレリアの者だがオリビアを知っているようだ。外は静かだし、中へ運び込んで治療をしよう。誰か外がどうなったか見に行ってくれ」


みんなでジェラールを食料庫から運び出し、しんと静まり返った王宮の2階を目指す。

血痕はあちこちにあったが死体はなく、医者が常駐していた医務室へ着くと、医療の心得があると言った近衛兵はジェラールをベッドにうつ伏せに寝かせて出血の激しい左胸に消毒液をぶちまけた。

気を失いつつもジェラールの身体が大きく跳ねたがそれをみんなで抑えて、ひとつだけのカンテラの灯りを頼りに傷口を確認した。


「これはひどい…!ですが道具が揃っているのでやってみます。オリビア様のお知り合いならば助けて行方を教えてもらわないと…」


「…オリビア…逃げられただろうか…。シルバーが一緒ならばなんとかここから脱出できたはずだが…」


「陛下!ハルヴァニア軍が救援に来ています!ああ助かった…ここはもう大丈夫です!ガレリア軍は敗走!陛下、灯りをつけましょう」


「ああ。だがこの者の存在は隠さなければ。ガレリアの者だとわかれば尋問されて最悪の場合殺されることもあるかもしれない」


助かってもらわなければ困る。

オリビアは神に選ばれて遣わされた救世主。

死ぬわけが、ない。
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