冷たいアナタの愛し方
ジェラールの呻き声は朝まで止まることはなかった。

最初は医務室内で見張っていた近衛兵もその苦悶に歪む表情と今にも呪いの言葉を吐き出しそうな呻き声を聞くに堪えなくなって医務室の外で見張っていた。


死んでしまったほうがいっそのこと楽だ――

だが両親と自分を殺そうとしたウェルシュがガレリアを継ぐなどあってはならないこと。

必ずこの手で八つ裂きにして殺さないと。


その後ならばこの身はどうなっても構わない。

必ず必ず、殺してやる――


――ジェラールが朝まで死神と戦っていた時、シルバーがローレンにたどり着いた。

大きな銀色の獣を見た住人たちはすぐ傍にオリビアが居るものだろうと思って捜したが…どこにも居ない。

皆が見守っていると鼻をくんくん鳴らしたシルバーは、迷うことない足取りで王宮の方へと向かって行く。


『お父様たちか垂れ目で怖い人の傍に』


オリビアとそう約束したことを忠実に実行しようとしていた。

何しろ王宮には今…どちらともの匂いがする。


天狼という聖なる獣――

人の言葉を聞き分けて、普通ではない力をも行使できるが…まだその時ではない。


とにかく走って走って…いつもオリビアと遊んでいた王宮の庭に入り込むと、2階の医務室から大好きな匂いがした。


次々とひさしに飛び乗ってバルコニーに入り込むと、やはりここから大好きな匂いがしたので少しだけ爪を出してかりかりとガラス窓を引っ掻いた。

…血の匂いがする。

人を食べようとは思っていないのでただ無心に引っ掻いていると、重たい身体を引きずるようにして男が出て来た。


「お、まえ、は……」


彼だ。

オリビアが垂れ目で怖い人と呼んでいた彼。


シルバーは力なく座り込んだジェラールに大きな身体を擦りつけて頬をぺろぺろ舐めた。
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