冷たいアナタの愛し方
「ジェラールはまだ帰って来てないのね。…で、ルーサーは今何をしてるの?」


「ジェラールについては捜索隊を出そうかなと思ってる。僕が今してるのは、ハルヴァニアとエンダーランドに今回ローレンを攻めた件について言い訳をしておこうと思ってね」


髪をひとつに括って本物の掃除婦のようにあちこち掃除しまくっていたオリビアは、手を止めて窓際にあるデスクで何かを書いているルーサーに近寄った。


「見てもいい?」


「いいよ。とにかくガレリアの意志ではなくウェルシュ単独の暴走だった、って書いておけば心証が悪くなるのはウェルシュだけだろうし。ハルヴァニアの国王は理解してくれそうだけど、エンダーランドはどうかな」


「ハルヴァニアは今レイドが国王でしょ?とってもいい人なのよ。だから…お父様たちのことも調べてくれていると思うの」


ルーサーは手を止めて顔を上げると、敬称をつけずにレイドと気さくに読んだオリビアを脚を組んで見つめた。

ローレンとハルヴァニアに親交があることは知っていたが――レイドと呼ぶ声に親しみが込められている。


「…親しいの?」


「ええ、年に1度の王族会議が行われる時や私の誕生日には必ず会いに来てくれるわ。真っ黒な髪と瞳が綺麗なの。とっても面白くて明るい人よ」


「へえ、僕は会ったことがないけど…じゃあハルヴァニアは大丈夫かな」


「ねえルーサー、その…べ、ベッドルームの掃除をしても大丈夫?見られちゃいけないものとか置いてない?」


「え?大丈夫だよ、掃除してもらえると助かるなあ。なに?緊張してるの?」


ベッドルームには大きなダブルベッドと本棚があるだけ。

躊躇しているオリビアは愛らしくて新鮮で、オリビアの背後に立ったルーサーは細い両肩に手を乗せて腰を折ると、耳元で囁いた。


「寝ていく?」


「え!?ちょ…冗談はやめて。笑えないから」


ぷりぷり怒られてデスクに戻ったルーサーはネクタイを緩めて、シーツを整えてくれているオリビアはいいお嫁さんになるだろうな、とぼんやり考えていた。


…彼女は7年前の約束を覚えているだろうか。
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