冷たいアナタの愛し方
ルーサーの離宮にずっと居るわけにもいかないし、レティたちはオリビアを呼び戻そうにもここまで入って来る権利を持っていない。

昼が過ぎた頃、オリビアは綺麗になった床を満足げに見下ろして手を洗い、帰り支度をした。


「お腹空いたでしょ、サンドウィッチ作ったから食べて行って」


「え…ルーサーが作ったの?でも私、奴隷だし…もらえないわ」


「君のために作ったんだよ。チーズのと卵のと野菜のと…あと秘蔵の生ハムを使ったやつ。すごく美味しいから」


白シャツの袖を捲ってキッチンに立っていたルーサーが何かを作っていたのは知っていたが…まさか自分のためだとは。

驚いているオリビアをソファに座らせたルーサーは、まず最初に卵のサンドウィッチを食べてみせて安全性を保障した。


「毒なんか当然入れてないし、入れてるのは愛情だけ。ほら、早く早く」


「あ、愛情って……頂きます」


奴隷の食事は本当に粗末なものだったのでそれを改善してもらえないか喉まで出かかっていたが…ルーサーに迷惑をかけるわけにはいかない。

それにサンドウィッチはとても美味しくて、完食したオリビアは隣に移動してきたルーサーを見上げて笑った。


「ありがとう、すごく美味しかった」


「ん、それはよかった。オリビア、口のところに卵がついてるよ」


「え、どこどこ?取れた?」


「違うよ、ここ………」


唇の端についていた卵を指で拭ったルーサーは、オリビアの金茶の瞳を間近に見て目が離せなくなってしまった。

またオリビアもルーサーの真っ青な瞳に釘付けになり、息がかかる距離にある端正な美貌に言葉もなく硬直する。


「……今僕が何を考えてるか…わかる?」


「……え…?わかんな……」


「…じゃあやめておこうかな。戻ってもいいよ、掃除をありがとう。送るよ」


ふっと身体が離れて、立ち上がったルーサーはオリビアと離宮を出て綺麗な庭を歩く。

オリビアは何がなんだかわからずにいたが、何をされそうになったのかは…わかっていた。


「……キス…」


囁きはルーサーに届かず、想いが募る。

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