冷たいアナタの愛し方
「私シルバーを庭で遊ばせて来たいんだけど…いい?」


「いいけど…ウェルシュと鉢合わせするかもよ」


「万が一鉢合わせしたらすぐ駆け込むから。おいでシルバー」


尻尾をぶんぶん振って喜ぶシルバーと共にジェラールの離宮を出たオリビアは、喜び勇んで跳ねまくるシルバーを綺麗に整備された芝生に座って笑顔で見ていた。

庭というよりももはや庭園と呼べるレベルのもので、区画整備はされているし外灯もあちこちに設置されている。

等間隔に植えられている木々も青々としていて、あれこれ観察していると耳元で荒々しい息遣いが聞こえた。


「もう戻って来たの?狩りに行くなら行って来てもいいわよ」


「きゅうんきゅうん」


離れたくないのか何度かオリビアの回りをぐるぐると回った後お腹を出して寝転んだシルバーに抱き着いていると、手をそっと甘噛みされた。

これはシルバーが甘えたい時の昔からの仕草で、毛並みが逆立つまでわしわしと撫でてやると身体をくねくねさせて大喜び。

つい夢中になって撫で回していると誰かの視線を感じてジェラールの離宮の2階を見上げた。


そこには窓を開けてこちらを無表情で見下ろしているジェラールが立っていた。


「ちょっと。ちゃんと寝てなさいよ」


「…その犬は俺が預かっているものだ。勝手に触るな。シルバー、お前も懐くな」


「私がご飯あげてるんだから私に懐くのは当然でしょ。羨ましかったらあなたがご飯作ってあげれば?」


ふてぶてしく返すと音を立てて窓が閉まり、ジェラールの姿が消える。


「…なによ、本当に気付いてないのね」


がっかりした呆れ声を出した時、ウェルシュの離宮から丸々と太った酒樽が飛び出て来るのが見えたので慌ててジェラールの離宮へと駆け込んだ。


オリビアは完全にウェルシュにロックオンされていた。
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