冷たいアナタの愛し方
ジェラールがスープを口にすると、オリビアはそれを上目遣いで眺めて顎でサラダ皿を指した。


「それも食べなさいよ。私が作ったんだから」


「作っただと?千切ってドレッシングをかけただけだろうが」


「じゃあ食べなくていいわ、貸して。ああ美味しー!」


つかつかと歩み寄ってサラダ皿を強奪したオリビアは、フォークでざくざくと野菜を指して口に放り込んでいく。

呆気に取られた表情で見上げて来るジェラールに省みずに今度はベーコンを頂くと、フォークで手の甲を突き刺されそうになって慌てて引っ込めた。


「ちょ…レディーになんてことするのよ!」


「お前はレディーじゃない。奴隷だ」


「あっそう、別にいいわよ。サラダ以外は全部ルーサー…王子が作ったんだからちゃんと全部食べてよね」


「ぷっ」


噴き出す声がして振り向くと…ルーサーは声を押し殺して涙目になりながら本棚に寄りかかって笑っていた。

恥ずかしくなったオリビアは空になったサラダ皿を抱えたまま部屋を飛び出して行き、ようやく笑いが収まったルーサーは長い前髪をかき上げながら椅子に座って脚を組んだ。


「彼女…可愛いでしょ」


「はっ、どこがだ?お前目がおかしいんじゃないのか」


「そう?まあいいけど。そういえば…オリビアには会えたのかな?」


完食したジェラールはナイフとフォークを置くと、再び横になって垂れ目な瞳を吊り上げて怒りを炸裂させる。


「街には居なかったから王宮に入ってみたらウェルシュの腰巾着にやられたんだ。あいつ…傷が治ったらただでは済まさないからな…!」


「まあまあ、どうどう。とりあえずは身体と心を落ち着かせてゆっくりして。僕かリヴィが看病してあげるから」


「リヴィ…?あの奴隷の名前か。奴隷の名前なんか呼ばない」


「呼んであげると喜ぶと思うよ。じゃあ僕たち1階に居るから薬を飲んで寝るんだよ」


じゃあ、と言ってドアを閉めると、ひとりきりになった。

シルバーはオリビアを追ってすでに1階に行っていたので少し心細くなったジェラールは、錠剤の鎮痛剤を奥歯で噛み締めて呑み込むと、慇懃無礼な女奴隷の態度にむかむかしながら瞳を閉じて無理矢理寝ることにした。
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