冷たいアナタの愛し方
身体を拭けと言われても…

今まで男の身体になどまともに触ったことがないし、一応お嬢様として育てられたのでレディーがそんなことをしてはいけないと教え込まれた。

オリビアが戸惑っていると、主の困惑を察したシルバーは低いうなり声を上げてジェラールの傷口の上に太い前脚をどすっと置いて悶絶させた。


「う…っ!お、い、シルバー!」


「身体なんて拭けるわけないでしょ!自分で拭きなさいよ!」


タオルを投げつけると、ジェラールは傷口を押さえて顔をしかめながらそのタオルをまたオリビアに投げつける。


「奴隷の仕事だぞ!そんなことも知らないのか!?」


「私奴隷になったばかりだもの。…ローレンで拾われたのよ。ルーサー王子に」


ローレンと口にした途端、ジェラールが瞳を伏せた。

ばつが悪そうな表情になり、ベッドに倒れ込んでしまったジェラールが傷ついている様子だったので罪悪感を抱いてしまったオリビアは椅子に座ってまとわりつくシルバーの鼻を撫でてやりながら、ぼそり。


「…ルーサー王子からあなたがローレンに向かって帰ってこないと聞いたわ。何をしていたの?」


「……お前に関係ない」


「あ、そう。私ローレン出身だから教えてあげられることがあるかなと思ってたけど、無さそうね。はい着替えのシャツ。ちゃんと寝てなさいよね」


「あ、おい…」


すくっと立ち上がったオリビアは、呼び止めようとしたジェラールを無視してシルバーと共に1階へと降りた。

まだ読書中のルーサーはソファに座っていたが、オリビアに気付くと顔を上げてにこっと笑う。


「どうだった?」


「身体を拭けって言われたけど断ってきたわ。そんなの…できないもの」


「僕が手本を教えたでしょ?今度はできるようにね」


意地悪心満載で極上の笑みを浮かべたルーサーはまた読書に戻り、オリビアは頭を抱えて窓際に置いてある椅子に座って深いため息をついた。
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