「同じ空の下で…」


ああ…。

穴があったら、入りたい。誰でもいいから、ここに穴を掘って下さい。
お金払ってでも、その穴を買い取るから…。

むしろ、このマンホールの蓋を力ずくでこじ開けて入ってしまいたいっ!


「・・・・艶香がいいなら、俺は毎日でも会いに行くけど♪」


早く、早く!誰か!穴~~~掘ってぇ・・・・!!!



駅が見えるとその恥ずかしさをこれ以上見られないように、私は改札に足早に歩いた。


「あと6件、…改めて、宜しくね。送ってくれてありがとう。」

「…ん。また、連絡する。無理、すんなよ?」

「はい。…じゃね。」


本当は、名残り惜しい。


私は自分の心の内を隠すように、改札を抜けた。



電車の中、独り呟く。

「…あと、6件で…終わりかぁ…。」


優しく降る雪を電車から眺めながら、宙にため息を漏らす。


アパートに戻ると、早々にお風呂に入り、冷え切った体を温めた。

そして、その熱が冷めないうちに、ベッドに潜り込む。

部屋の照明を落とすと、瞬に愛されたその身体を抱きしめた。
そして、寂しさを感じながら…目を瞑る…。



今までに感じた事のない感情を、6件、5件、4件…とカウントすることで、紛らわせ、押し潰そうとした。


『瞬がここで毎日私を温めてくれたら…』


それが現実となるとすれば、毎日が幸福に満ちていき、何もかもが色褪せてみえてしまい、私は見事に堕落するだろう…───。


恋というものに溺れそうになる予感を…必死にかき消そうとしていた。






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