「同じ空の下で…」

――――――――明け方。

けたたましく鳴る互いのスマホの目覚まし音で目が覚める。

うっすらとゆっくり目を開けると、体が動かなかった。

ゆっくりと目線を移すと隣には瞬が眠っていた。


あのまま、私たちは眠ってしまった。

そして2人で朝を迎えていた。


もう2人で会わないなんて約束したのに、雰囲気に任せて、私は随分な我儘を瞬に言ってしまった気がする。


「…ごめんね、瞬。」


愛しい寝顔を見つめ、そのまま頬に触れながら、私は小さく謝った。

彼の体温を感じながら、今この時を…忘れまいと。


瞬を起こさないように、彼の抱擁からすり抜け、その辺に散らばった服をかき集め、胸を覆い、バスルームへ向かった。



瞬、あなたとの記憶も、こんな風に…洗い流して忘れられたらいいのに。




シャワーから上がると、いつもの朝と変わらず、出勤の支度をする。

トーストを取り出すと、それをトースターに入れ、ミルクを温めるとインスタントコーヒーを混ぜカフェオレを作る。

おかずには、今日は…ハムエッグ。


いつもとの違いは、2人分作っている事。


気配に気づいた瞬は、目をうつろにして、ベッドを探り私を探した。


「…艶香…?」


「お早う…。私、先に出るね。」


「…やべぇ…。俺、寝ちゃったのか…。」


< 146 / 646 >

この作品をシェア

pagetop