「同じ空の下で…」

「…そうみたいだね。私も寝てた。」


「なんだよ…。俺を置いて…。先に起きちゃったのかよ…。」


そう言って、にこやかに笑いかけてくる瞬。


そして、ベッドの上で手招きをする。


「…だめだよ、瞬。私には触れない約束じゃない。」


「…今日はいいんだよ。早くこっちに来て…。」


その笑顔と甘えん坊な態度に…私はめっぽう弱い。

素直に瞬のところに行き、ベッドに腰掛けてみる。


「遅刻するので…手短に…ね?」


「艶香ぁ…。」


抱きしめられて、そのまま押し倒される。


「…やめてよ。」


「ちょっとだけ抱きしめさせて下さい…。」


至福の時というのは、きっとこんな状況を言うのかもしれない。

世間一般にそう言わなくても、私には充分、この状況は至福の時である。


瞬のまっすぐな気持ちに応えるように、私も瞬の首に腕をまわす。

瞬は調子に乗って、足を絡めてくる。


「…ほんとうに…遅刻するから、もう、いい?」


「…やべーな、俺、ほんとにアメリカ行くのかな。行きたくないや。」


だったら、行かなきゃいいじゃない。

思わず口走りそうになるけど、言わない。…言えない。

言ってはいけないような気がする。



「…ご飯、食べよう?」

「…ん♪」

私のおでこにキスをすると、瞬はやっとの事で体を起こし、そして私も自由になれた。



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