「同じ空の下で…」

そんな上司の下で一時でも部下だった自分を誇りに思う。


「英君。」

私を呼ぶ常務の声で、私達の無駄話は一旦止まる。

慌ててB5判の常務のスケジュール帳とシャープペンシルを持ち、立ち上がる。

「はい。」


部屋から顔を覗かせてる常務と共に常務室に入り、指示を受ける。




朝までの二日酔いの気持ち悪さはいつの間にか消えていて、スケジュール帳を片手に私はいつものように常務の指示をメモした。



10時から常務はA会議に入る。
取締役を含め、社長、経営陣、営業部の会議である。
言わば、上層部の会議だ。

その後、会食に向かう為の社用車の手配、および、A会の最中に支社から来る工場長からの連絡への対応の指示を受け、また私はデスクに着いた。



その日やたら忙しく、プライベートの事で物思いにふける時間なんて微塵も無かった。


憂鬱な月曜日は、こうであってほしいものである。




常務がA会に入り、自分にほんの少しの時間の余裕ができると自販機コーナーのフロアに行き、久々にコーヒーを買った。


ビルの合間から見えるその日の空は、青々としていてその空を泳ぐように雲が早いスピードで形を変えていく。



今、瞬も同じ空を見上げているだろうか?

瞬と過ごせる週末も…あと4回しか無い…────。


カップに残る生温い琥珀色のブラックコーヒーを飲み干すと敢えて階段で自分のデスクのあるフロアへと向かった。

今朝から軽く、社内エレベータ恐怖症である。

< 262 / 646 >

この作品をシェア

pagetop