「同じ空の下で…」
ほんの数分間だけの幻想のような光景だった。
凝視して見入っていた私の耳に聞こえる会議室の会話など、上の空だ。
全くもって秘書失格であろうと思う。
虹色の雲は、緩やかに形を変え、すぐ様真っ白い普通の雲の色になってしまった。
私は幻覚でも見てしまったのかもしれない…。
すっかり心を奪われていた窓の外から、会議室の光景に目線を移し、現実に戻り会議へと集中した。
時折窓の外を見るが…白い雲が緩やかに青い空にを悠々と泳ぐように流れているだけだった。
プレゼンがあれば、楽しいものだが、質疑応答の繰り返しになると、酷く退屈な会議に過ぎなかった。
2時間に渡った会議がやっとの事で終了し、拘束時間から解放され席を立つと、先に室外に出て、常務が出て来るのを待っていた。
室外の廊下には、香織さんも社長が出て来るのを待っていた。
軽く頭を下げる。
「お疲れ様~、艶香ちゃん」
「お疲れ様です。」
続々と会議室からスーツ姿の人間達が出て行く。
殆どが知らない顔だった。外部の人が多かったのだろう。
それほど迄にこのプロジェクトは注目されているのだと、本田部長が最初に言ってたかもしれない。