「同じ空の下で…」
ラッシュの電車の中は、相変わらず蒸し暑さと人混み特有の匂いが立ち込めて居て、しかめっ面をした自分の顔が車窓に映っていた。
茜色に包まれている夕暮れ時。
今、幸せ絶好調な筈なのに、アンニュイな気分になってしまうのは、人間が生まれもって備わっている黄昏時への本能的な感情の表れなのかもしれない。
今日が…終わってしまう。
そんな事を思いながら、車窓の外を見ていた。
駅に降り立ち、暫く歩いてる時にふと見覚えのあるシルエットを見かける。
バイクに寄りかかって煙草を吹かす姿。
二度見して足を止めてみれば、私を見て微笑む…瞬。
「お帰り。」
私の顔はたちまち一瞬にしてホニャホニャに崩れてしまい、
「ただいまっ!」
足早に駆け寄り、少し背伸びをして彼の首に手を回してハグをした。
「…待ちきれなくて待ち伏せしてみた。」
低くて心地よい、瞬の声のトーン。
「うん、ありがと…。」
ヘルメットを渡されて、瞬のバイクの後ろに跨る。
太ももが露わになってしまうのを隠すように座り直して、彼の背中にこれ以上ないって程に密着した。
エンジン音と爆音を響かせ、バイクをふかすと、瞬は器用に駅のロータリーを一回りして、走り出した。
瞬の背中にしがみつき、また、きつく彼のウエストを抱きしめた。