「同じ空の下で…」

降りた瞬間、私は息を飲んだ。


そこは、半島だった。

どうやって来たのか分からないけど、自分が立つ後ろ側には木々が生え、僅かながらの葉を残した木々が鬱蒼と生える森が有り、目の前…言わば、自分の眼前にあるその光景には海が一面に拡がっていた。

そこにぽつりと立つ、寂しげな展望台。

「・・・・綺麗な・・・・景色だね。」


そこに立つ私達は少し小高い所に位置していたのか、波の音も全く聞こえず、大海原の向こうには、今まさに漁をしてこちらに向かって来て居る様な船が一艘、光を携え緩やかに移動していた。

とても静かな朝だった。


「綺麗でしょ?」


まだ寝ぼけながら頭はボーっとしている私に、瞬はホットミルクティを差し出しながら隣に並んだ。

「ありがとう…」

ミルクティを受け取り、缶を開け一口含むと、また景色を見る。そして、大きく息を吸い込み暫く漁船の行方を追って居た。

空は、緩やかに明るく成って行く。


「俺、艶香に見せたいものがあったんだ。」


私の横で暖かい缶コーヒーを一口飲み、私と同様、海に目線を移す瞬。

瞬の口から白い息が出て居るのを見ると、とてつもなく今まさに寒いのが良く分かった。


「そう、ありがとう。綺麗な景色だね。」

「違うよ。もう少し、待っててみて。」

「…?」

「俺が見せたいのはこの景色じゃない。」

目の前の大海原にぽっかり浮かぶ島を指さすと

「あそこ、見てて」

と、瞬が言う。

まだ頭が正常に機能してない私は、言われた通りにそこに目を向けた。
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