「同じ空の下で…」
思わず言葉を失う。

怪訝そうに、由美が私を見る。



「…あの、どなた?」

自分の声が震えているのが分かった。

「…名乗る程のものじゃあ、あ•り•ま•せ~ん」


電話の向こうの人は、明らかに私の反応を楽しんでいる。



「あの……忙しいので、切りますね?」

「は~い♪ごめんなさ~いでーす♪」


ツーツーツー…………



無機質な機械音が耳を刺激する。

半ば呆然としながら、耳から離すと画面をみて、テーブルの上にスマホを静かに置いた。

「つやか?」

由美の声で我に返る。

「あ、ごめんごめん。…あ、デザート頼もうっか。」

「亮太君じゃなかったの?」

しなやかで、よく手入れされた指を止め、由美は眉間にシワを寄せた。

「あ、うん…。まぁ、いつもの事だから気にしないで」

心配してくれる由美に、ニッコリ微笑み返した。

「……なら、いーけど。あ!あのね、まだ時間大丈夫かな?」

「うん、大丈夫だよ」

私は目一杯平静を装った。

「さっき話したイベントに関係してる友達が近くで飲んでるっていうから、一緒に顔出ししてこない?」

「分かった、いーよ」

また平静を装い、私は頷く。


亮太の電話から電話をかけて来る女───…

本当は、

いつもの事なんかじゃない。

初めてだった。


内心

かなり動揺していたんだ………




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