この恋は、絶対に秘密!
「おやすみなさい……」



彼の背中にそう投げ掛けると、私も寝室に入ってゆっくり扉を閉めた。

さっき、ほんの少しだけ触れ合った唇の感触を思い出すとドキドキするのに、それ以上に胸が痛い。


岬さんは、まだ元奥さんのことが忘れられないのかな……?

もし彼女とやり直したいと思っているのだとしたら、私なんかが入り込む余地なんてこれっぽっちもないだろう。


私は胸を押さえて下唇を噛み締めた。



「……苦しい、な」



初めて知った。

片想いって、嬉しくて楽しいことばかりじゃないんだって。

やっぱり私は何も知らないお嬢様か……。



思いがけず経験してしまったファーストキス。

それは、甘い魅惑の世界への突破口なんかじゃなく、恋の苦さを知るものとなった。








< 194 / 387 >

この作品をシェア

pagetop