この恋は、絶対に秘密!
「岬さん……」



蚊の鳴くような声で、ベッドに横たわる愛しい人の名前を呼ぶ。

その寝顔は、目に込み上げるモノのせいでぼやけてよく見えないけれど。



「大好きです。でも……さよなら」



届くことのない、最初で最後の告白をして、私はすぐに部屋を出た。


一度は棚にしまった合鍵を使って鍵を掛け、郵便受けに落とす。

カチャン、という冷たい音は、私の恋が終わった合図のように思えた。



ランニングや犬の散歩をする人とすれ違いながら、私はとぼとぼと歩いていた。

足は勝手に図書館へと向かい、その周辺のベンチで止まる。


私の気持ちとは対照的に清々しい朝は、眩し過ぎて歩く気力を奪う。

そのベンチに力無く座り込み、バッグからスマホを取り出した。


< 231 / 387 >

この作品をシェア

pagetop