猫 の 帰 る 城




僕らはどうしようもない人間だ。

誰かを排除することで初めて、その関係を深めることができる。
また自分に本当に必要なものは、誰かを傷つけて初めて知ることができて、それによって存在価値を得る。


そう、僕たちの間にはひとつの感情があったのだ。
自分たちの知らぬ間に生まれていたのだ。

その感情になんて名前をつけたらいいのかはわからない。
けれど僕は、これをきっと愛情と呼ぶのではないかと思っている。


そう大そうなものじゃなくて、とても小さな、ささやかな。
暗闇の中で灯るただひとつの炎のようなもの。
とてもわずかな、それでいて気まぐれに燃え盛り、ゆらゆらと揺らぐもの。


それが僕らの間に生まれていたのだ。
いつしかその光が広がり、それを頼りに生きていたとも知らずに。


生まれた感情がどこまで深いもので、どこまで燃え続いていくものなのかは、僕にはわからない。



それでも今、僕たちは、光の満ちる世界で二人きりになったのだ。









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