月下の幻影


 月海が少しためらうような表情を見せた。
 和成は少し意地悪な笑みを浮かべて月海を見つめる。


「何か不都合でも? まさか、人を斬った事がないなんて言わないよね? 人を斬れない護衛はいらないよ」


 和成の言葉に月海は再び食ってかかる。


「私は塔矢殿の前線部隊所属です。人が斬れなかったら、今ここにおりません。君主様がお怪我をなさってはと、ご心配申し上げただけです」

「ご心配ありがとう。でも、無用だけどね。私は結構強いよ」


 静かに見下ろす和成を、月海はムッとした表情で見上げた。


「かしこまりました。真剣でお願いいたします。用意して参りますので、道場にてお待ち頂けますか」

「承知した」

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