月下の幻影


 なんとなくわかった。
 塔矢が月海を引き合わせた理由が。

 月海は、紗也と初めて会った頃の和成によく似ているのだ。

 塔矢と月海から目を逸らして、大きくため息をついた和成を見て、月海が食ってかかった。


「私の腕をお疑いでしたら、お手合わせ願います」


 和成は驚いて月海を見つめる。
 頬を紅潮させて睨みつけていた。
 どうやら、和成のため息を小馬鹿にされたと勘違いしたらしい。


「控えろ、月海」


 塔矢が諫めるのを和成は片手で制した。


「いいよ。真剣勝負といこう」
「え? 真剣ですか?」

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