その恋、取扱い注意!
「ありがとうございましたー」

最後の客を入口まで見送り、シャッターの開閉スイッチを作動させた。

湊と会ってから、2週間が経っていた。

最近、どういうわけか湊の姿が頻繁にチラついて睡眠不足気味。
そのせいでお客様と話している最中にも眠気に襲われて、送り出した途端にあくびが……。

トン。大きな口を開けた時、肩が叩かれた。

「うへっ」

突然叩かれて、私の口から変な声がでてしまう。

「安西さん、今日これからの予定ある?」

肩を叩いたのは同期でこの旅行会社に入社した久我晴香(くがはるか)。すっとした面立ちの日本美人で、彼女の自慢はシャンプーのCMにでも出られそうな長い黒髪。
業務中は邪魔になるから、後ろでひとつに結んでいるけど、シュシュを外しても跡が残らず羨ましいほど健康な美しい髪。

「これから……?」

私は壁に掛けられたごく普通の時計を見た。
現在の時刻は19時を少し回った所。
たった今入った予約を確認しなければならない。

「ええ。さっきね? 菊池さんと行きたい所で盛り上がっちゃって。それなら今日行こうってことで」

菊池さんというのは、発券課に配属された同期の子だ。

< 12 / 437 >

この作品をシェア

pagetop