その恋、取扱い注意!
「行きたい所ってどこ?」

「新宿にある『美人堂』って所へ飲みにね」


初めて耳にするお店。
飲みに行くだけなら、駅前の居酒屋でいいのではないかと思う。
しかもここは渋谷で、居酒屋なら目につく程あるのにと、私は行こうか迷う。

「予定、何もないんでしょ? 明日、安西さんはお休みでしょ。OKでいいわね。20時までに仕事を終わらせてね~」

久我さんは私の返事を待たずに行ってしまった。

背中で左右に揺れる黒髪を見ながら、「明日は休みだし。ずっと寝ていられる。まっ、いいか」と一息ついて席に戻った。

先ほどの予約を処理し終えたのは、約束の時間の10分前だった。
バッグを持って、更衣室に向かうと久我さんと菊池さんがいた。

同期入社として親睦を深めるために、活動的な久我さんを中心に飲みに行ったりしている。

私はふたりが話しに花を咲かせている間に、ロッカーを開けて制服を脱ぎ、細身のジーンズにブラウスと白いジャケットを羽織る。

6月初旬のこの季節、日増しに気温が上がり、そろそろジャケットはいらなくなってきた。
でも、たまに肌寒い時もあるし……と、薄手のジャケットを最近ではチョイスしている。


< 13 / 437 >

この作品をシェア

pagetop